【三段跳】8年ぶりにやってきた彼女は3足のシューズをフィッティングした。~熊本の少女が全国インターハイに出場するまでの8年間の話。(その2)

熊本県にある滝

その1「高校2年生の彼女は三段跳びをはじめた」のつづきです)


2017年5月。
彼女は8年ぶりにオリンピアサンワーズにやってきた。
小学4年生だった小さな女の子は、精悍に日焼けしたアスリートとなって目の前に現れた。

お父さん:
「本当はもっと早く連れてきたかったんです。娘からはずっと『鶴橋のお店に連れて行ってくれ』と頼まれてました。けれど、なかなか機会がつくれなくて、かわいそうなことをしました。」

川見店主:
「熊本の方々は大きな震災も乗り越えなければなりませんでしたもの。私たちには想像できない、たくさんのご苦労があったことだと思います。」

お父さん:
「いろんなことがありました。そして、やっとここに来れました。」

この8年間、お父さんはずっと彼女の競技生活を応援しつづけてきた。
できるかぎり彼女が出場する試合にかけつけ、その姿を動画におさめた。
川見店主はそれらの動画を見せてもらった。
彼女の走る姿や跳躍のフォームは、想像していたとおりだった。

川見店主:
「上半身をもっとやわらかく、そしてカラダ全体をもっと大きく、のびのびと使えるようになれば、彼女はもっと記録を出せます。」

お父さん:
「本当ですか。」

川見店主:
「今でもこれだけ跳べるんですから、彼女の秘めた力はこんなものじゃないですよ。」

次に、川見店主は彼女の足に向き合った。
がんばりつづけて無理を重ねた足だった。
足の痛みの原因がどこにあるかを探った。
彼女の足を守るためのシューズを選んだ。
彼女が最高の力を発揮するためのインソールを作った。

初日、トレーニング用アップシューズ、短距離スパイクシューズの2足をフィッティング。装着したオーダーメイド・インソールは、いずれも最上級インソールのゼロ・アムフィット。


川見店主はシューズのフィッティングを行いながら、幾度となく彼女に質問を投げかけた。返ってくる言葉の中に彼女の感覚をさぐった。頭の中で彼女の気持ちで走り、跳躍し、湧き上がるイメージをとらえながらインソールの調整を繰り返した。

できあがったシューズを履いて、彼女は軽くステップを踏んでみた。
シューズは足に心地よくフィットした。
足の痛みは不思議と感じなかった。

川見店主は時間が許す限り、正しい姿勢での立ち方・歩き方や、カラダの柔軟性を高めてスプリントのフォームを改善する具体的なトレーニング方法を彼女に教えた。8年前、彼女のお姉ちゃんに教えたように。
彼女も店内でそのトレーニングを熱心に実践した。お父さんは目を細めてその光景を見ていた。

お父さん:
「ああ、こういう話が聞きたかったんです。やっぱり来てよかったです。」

この日のフィッティングは終了。
彼女とお父さんは、ふたたび機上の人となった。

*****

熊本に帰った翌日から彼女は走りだした。
苦しめられていた足の痛みは消えていた。
練習で久しぶりに300m走の記録を測った。
ウソみたいな自己ベスト記録が出た。
ウソだろうと、コーチがビックリした。
ウソみたいと、自分でもビックリした。
顔を合わせて言った。

だって昨日まで全然走れなかったのに!

*****

5日後。
彼女はお父さんと一緒にふたたび来店。
その表情は明るかった。

お父さん:
「帰った次の日から走れるようになりました。もう足の痛みも感じないそうです。」

川見店主:
「それは、よかったです!」

お父さん:
「インソールでこんなに変わるのですね。すごい技術です!かえすがえすも、もっと早くこの店に連れてくるべきだったと後悔させられます。」

この日は、取り寄せた三段跳び用のスパイクシューズをフィッティング。装着したオーダーメイド・インソールは最上級インソールのゼロ・アムフィット。


この時点で、全国インターハイ進出を賭けた熊本県予選会は2週間後、南九州予選会は約1か月後に迫っていた。残された時間はわずかだった。

川見店主には心配があった。
これから彼女の調子が上がっていけば、助走のスピードは速くなるだろう。すると、ストライドが伸び、跳躍のリズムも変わり、これまでとは踏み切りの位置が合わなくなる危険がある。ファウルを連発しては記録が残らない。
たった2週間や1か月で、彼女は新しい跳躍を身につけることができるだろうか?
川見店主は、そのリスクを彼女に問うた。
彼女はキッパリとこたえた。

「大丈夫です。踏み切り位置の修正はできます。」

こうして、まる2日間を費やしたシューズのフィッティングが終了した。
この時、誰が予想できただろう。
30日後に彼女が起こす途方もない奇跡を。


(つづきます↓)
・その3 彼女はこの夏を忘れない

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