2020年9月8日に創業57周年を迎えたオリンピアサンワーズ。その歴史のあれこれを、シリーズでご紹介します。 (連載:第9回) ◆◇◆ 店主が座る「場所」 上田から店のカギを渡された川見は、その日のうちにファミリーレストランのパートを辞めた。 翌日、川見はひとりで店を開けた。 営業の間はずっと、川見は店の中で小さくなっていた。 上田の代わりの役目など、自分に果たせるわけがないと思っていた。 店の中央には、古い木製の事務机とスチール製の椅子があった。 そこが店主の場所だった。 川見は、恐れ多くてその場所には座れなかった。 小さな丸椅子を机の横につけて座り、できるだけ端の方で仕事をした。 はじめて鳴った電話の音に心臓が飛び出そうになった。 恐るおそる受話器を取ると、ある学校の先生だった。 「 あれ?いつものおばちゃんは? 」 「 すみません、おばさんは、ちょっと留守をしております 」 「 へー。ところで、あなた、どなた? 」 「 留守をあずかっている者です 」 「 そうか。槍(やり)を注文したいんやけど 」 「 すみません、どうやって注文を受けたらいいか、私わからなくて…… 」 「 それはやな、まずメーカーさんに電話して…… 」 こんな具合に、川見はお客さんから指示を受けながら仕事をすすめていくことになった。 上田が書いた店内の見取り図。この図では方角が、上は「西」、左は「南」にあたる。中央に書かれた「机」の場所で、上田はいつもたばこをふかして座っていた。 ◆ 「私の椅子に座りなさい!」 川見は毎朝、病院の上田を訪れ、仕事の報告をしてから出勤するようになった。 1か月ほどが経ったある日のこと。 ベッドに身を横たえていた上田は、ふいに川見に訊いた。 「 あんた、どこに座って仕事をしてるんや? 」 「 おばさんの机の横に、丸椅子を出して座っています 」 上田は激怒した。 身を起こして、叫ぶように言った。 「 私の椅子に座りなさい! 」 突然のことに、川見は狼狽(ろうばい)した。 上田は言葉を継いだ。 「 あんたがいつまでもそんなんやから、私は死なれへんのや! 」 川見には、その言葉の意味が理解できなかった。 呆然(ぼうぜん)とする川見に、上田はつづけた。 「 私に店をつづける使命が残っているのなら、とっくに退院できているはずや。いつまで、私をこんな状態で生かしておくんや!今
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