虹の彼方に。~15年を生きたねこの話。

川見店主のもとに花が送られてきた。 メッセージカードが添えてある。 「ご家族の皆様が一日も早く 心癒されますように、 チビ太ちゃんのご冥福を 心より お祈り申し上げます。 ○○動物病院 スタッフ一同」 ◆ 15年前、春。 家の裏から仔猫の鳴く声が聞こえていた。 川見店主が見に行くと、勝手口に、2匹の仔猫が寄り添ってうずくまっていた。 小さなキジトラ模様の仔猫と、さらに小さな黒い仔猫。 鳴いていたのは、黒い仔猫だった。 キジトラの仔猫は、鳴くことさえできないほど、弱っていた。 2匹の仔猫を、行きつけの動物病院に連れていった。 院長先生は言った。 「状況をうかがうと、捨てられたわけではなさそうですね。それと、この2匹は兄弟ではないです。おそらく、それぞれのお母さん猫は、他の猫とのえさ場争いに負けてしまったのでしょう。そして、逃げている間に、この仔猫たちは、はぐれてしまったのでしょう」 病院へ一緒に付き添ってきた次女が言った。 「飼ってあげるしか、ないよね」 困ったことになったと、川見店主は思った。 ◆ 黒い仔猫は、幸いにも引き取り手が見つかった。 キジトラの仔猫は、川見店主が飼うことになった。 「チビ太」と名づけられた。 ようやく元気になった頃のチビ太。 川見店主は心配した。 「ひとつ屋根の下で、犬と猫が暮らせるのだろうか?」 当時、川見店主はすでに犬を飼っていた。 10年ほど前、近所の人に頼まれたのだ。 「ウチの犬が、仔犬を産んじゃって。一匹もらってくれない?」 断ろうと思っていた。 早速、生まれて間もない仔犬が家に連れて来られた。 川見店主はため息がでた。 可愛すぎて、気がおかしくなりそうだった。 ずるい!こんな子を見たら、断われない! 仔犬は、そのまま川見店主の家に置いていかれた。 綿みたいに真っ白で、ふわふわで、ポンポンしてるから「ポンくん」と名づけられた。 1994年春。家族の仲間入りをしたポンくん。 ポンくんは、みるみる成長した。 雑種の中型犬と育った。 川見店主は、ポンくんが大きくなったら「外」で飼うつもりだった。 でも、結局それはできなかった。 川見店主にとって、ポンくんは、大きくなっても、外で飼うには「可...