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12月, 2020の投稿を表示しています

さらば、2020年よ。

2020年が終わろうとしています。 この一年をふりかえると……まぁ、大変でしたよね。 しかも、この「大変さ」がいつ終わるのかがかわからない、という状況はまだつづいています。 色んな業界が大打撃を受けてます。 スポーツ業界も、もちろんです。 今年の目玉であったオリンピックは延期されました。 学校生活は再開されたものの、クラブ活動は遅れ、試合の規模や数はめっきり縮小されました。 この秋冬のマラソン大会は、日本全国で自粛され壊滅状態です。 それでもオリンピアサンワーズは、今年もなんとか営業をつづけてこれました。 そして、来年もまた、営業をつづけていきます。 みなさま、誠にありがとうございました。 それでは、よいお年をお迎えくださいませ。

【陸上競技】新谷仁美選手の走りは、なぜこんなにも力強いのか?~日本選手権大会・長距離種目を観戦した話(その2)

マスク越しのモグモグタイム 女子5000mは田中希美選手が優勝し、東京五輪代表の内定を決めた。 その勝負の余韻がまだ、会場を覆っている。 この日、川見店主と一緒に試合を観戦したのは、ボクと、Oさんと、Yさんと、Tさんだった。 5人は、第1コーナー上のスタンドに席をとった。 フィニッシュラインを斜め上から見下ろすとともに、トラック全体を見渡せるいい場所だった。 「いやぁ、田中選手はすごかったですねぇ」 「いいレースを観れましたねぇ」 そんなことを、皆がマスク越しに言い合った。 陽はすでに傾き、夕暮れの空が暗がりの度を増していく。 スタジアムのライトが点灯し、トラックを照らしている。 今大会では、感染防止対策として、来場者はみな密にならないように、両隣の席をひとつずつ空けて座ることを大会側から求められた。 12月の冷たい風がスタンドを回旋し、吹きつけてくる。 身を寄せ合うことがない分、寒さがよけいに体に沁みた。 川見店主は、みんなのために差し入れを用意していた。 手作りのコロッケサンドと、魔法瓶に入れたあったかいコーヒー。 「じゃあ、我々はモグモグタイムといきましょう」 皆でコロッケサンドに舌鼓を打ち、コーヒーで冷えた体をあたためていると、女子10000mのレースがはじまった。 ◆ 新谷仁美選手の10000m 女子10000m決勝。 入場ゲートから真っ先にトラックへ駆け出してきた女子選手がいた。 観衆の視線はすべて、彼女に集まった。 新谷仁美選手。 無駄なものは何もかもそぎ落とされた、針金のように細い体。 誰よりも日焼けした褐色の肌。 その姿に、彼女が費やしてきたトレーニングの過酷さを想像する。 この一年、彼女は一体どれだけ自分を追い込んできたのだろう? 今年、彼女の好調ぶりは、大きなニュースだった。 1月にアメリカで行われたハーフマラソンでは日本記録を更新。 10月18日のプリセンス駅伝と、11月22日のクィーンズ駅伝では、いずれも区間記録を1分以上も更新する、ぶっちぎりの走りを見せた。 しかも、クィーンズ駅伝で走った3区の10kmの通過タイムは、なんとトラックでの女子10000mの日本記録(当時)を上回っていたのだ。 「新谷仁美、異次元の走り」 マスコミがそんな風にはやし立てたのは、誇張でもなんでもなかった。 誰から見ても、現在の彼女の強さは圧倒的で、驚異的で、超人

【陸上競技】田中希美選手の走りは、なぜ私たちをワクワクさせるのか?~日本選手権大会・長距離種目2020を観た話(その1)。

川見店主、日本選手権へ 2020年12月04日。 川見店主は、昼過ぎに店を閉めた。 営業を途中で切り上げることは、めったにないことだった。 車に乗り、ハンドルを握ると、南へと走った。 長居スタジアムでは陸上競技日本選手権大会・長距離種目がはじまろうとしていた。 この大会は、東京五輪の選考会も兼ねている。 現在の日本陸上競技界を代表する錚々たる選手たちが、スタートリストに名を連ねていた。 好記録が生まれないわけがない。 川見店主は、仕事を投げ出してでも観戦しなければと思っていた。 車中、電話が鳴った。 ハンズフリーで応対する。 聞き慣れたOさんの声が聞こえた。 一緒に観戦する約束をしていたOさんは、すでに会場に到着したらしい。 「川見さん、もう競技場の入り口はスゴイ人です。列をなしてますよ」 色々と厄介な時期である。 大阪府市では、不要不急の外出を自粛するよう、知事がよびかけている。 そんな状況下でもなお、多くの人が競技場に足を運んでいるのは、やはり、この大会の重要性を知っているからなのだろう。 車は長居公園に到着した。 川見店主は逸る気持ちを押さえながら、地下の駐車場に車を滑り込ませた。 ◆ 度胆を抜く田中希美選手 女子5000m決勝。 優勝候補は、田中希美(21=豊田自動織機TC)選手と、廣中璃梨佳(20=日本郵政グループ)選手。すでにこの種目で東京五輪の参加標準記録を突破している両選手のうち、今大会で優勝した者だけが東京五輪の切符を手に入れることになっていた。 田中選手には、不思議な雰囲気がある。 どんなレースでどんな結果を残しても、強烈な印象を残す。 最近では、10月24日に同長居スタジアムで行われた、木南記念大会の800mのレースが記憶に新しい。 彼女はトラック1周目の400mを最後尾で通過し、残り400mで、なんと前を走る6人の選手全員をぶち抜いた。そして最後は、ぶっ倒れながら頭から突っ込んでフィニッシュして優勝するという、見る者の度胆を抜くレースを展開した。 度胆を抜く田中選手の800m(木南記念大会2020)↓ ◆ 田中希美の5000m 16時50分、女子5000m決勝のレースはスタートした。 トップを走る廣中選手を田中選手が背後でピッタリとマークし追い続ける、という展開が終盤までつづいた。 最後の周回を知らせる鐘が打ち鳴らされ、残り400m