川見店主は、その人を抱きしめた。 そして、両腕をつかんで体を離すと、その人の顔を見つめて言った。 「よくがんばりましたね」 その人はこたえた。 「ありがとうございます。無事に帰ってきました」 川見店主は、その人を、もう一度、強く抱きしめた。 ◆ 彼女が背負ったもの お腹の子は、中から強く、何度も何度も、蹴ってきた。 お母さんは、元気な子が生まれてくるだろうと思った。 町の助産院で、彼女は生まれた。 彼女をとりあげた助産師さんは、彼女の足を見て、声をあげそうになった。 その足が誰にも見えないように、小さな体を、そっとタオルで包みこんだ。 そして、お母さんに優しく声をかけた。 「元気な女の子ですよ」 お母さんは、生まれたばかりの小さな命を愛おしく見つめた。 2日後、彼女は大学病院へと運ばれた。 彼女の右足は、足首から先が大きく内側に曲がっていた。 足の親指が、脛(すね)にくっついていた。 精密検査が必要だった。 冷たく大きな検査装置の中に、ひとり寝かされた。 お父さんは、胸を締めつけられながら、ガラス越しに小さな命を見守った。 「先天性内反足」 それが、彼女がこれからの長い人生に背負っていくことになる病名だった。 医師は言った。 「でも、この子は大丈夫です。こんな言い方は間違っているかもしれませんが、この子の足には、必要な″部品″が全部そろっています。だから、大丈夫です」 ◆ 走ることが好きだった 生後2か月の時と、4歳の時と、彼女は大きな手術を2回受けた。 ある日、おじいちゃんが病院へ見舞いに行った。 可愛い孫の姿は病室にはなかった。 おじいちゃんが彼女の居場所を尋ねると、看護師さんが笑ってこたえた。 「廊下にキズが見えますよね?Eちゃんが足に装具を付けたまま元気に歩きまわるので、キズがつくのです。あのキズをたどっていけば、Eちゃんに会えますよ」 彼女の右足は、足先から太ももまでを装具で固定された。 でも、彼女は不自由を感じることはなかった。 自分にとっては、生まれながらの自分の足だった。 幼稚園にあがるまでは、装具を付けたままで周りの友達と同じように、いや、それ以上に元気に遊びまわった。 お母さんも、決して彼女を特別扱いしなかった
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