マスク越しのモグモグタイム 女子5000mは田中希美選手が優勝し、東京五輪代表の内定を決めた。 その勝負の余韻がまだ、会場を覆っている。 この日、川見店主と一緒に試合を観戦したのは、ボクと、Oさんと、Yさんと、Tさんだった。 5人は、第1コーナー上のスタンドに席をとった。 フィニッシュラインを斜め上から見下ろすとともに、トラック全体を見渡せるいい場所だった。 「いやぁ、田中選手はすごかったですねぇ」 「いいレースを観れましたねぇ」 そんなことを、皆がマスク越しに言い合った。 陽はすでに傾き、夕暮れの空が暗がりの度を増していく。 スタジアムのライトが点灯し、トラックを照らしている。 今大会では、感染防止対策として、来場者はみな密にならないように、両隣の席をひとつずつ空けて座ることを大会側から求められた。 12月の冷たい風がスタンドを回旋し、吹きつけてくる。 身を寄せ合うことがない分、寒さがよけいに体に沁みた。 川見店主は、みんなのために差し入れを用意していた。 手作りのコロッケサンドと、魔法瓶に入れたあったかいコーヒー。 「じゃあ、我々はモグモグタイムといきましょう」 皆でコロッケサンドに舌鼓を打ち、コーヒーで冷えた体をあたためていると、女子10000mのレースがはじまった。 ◆ 新谷仁美選手の10000m 女子10000m決勝。 入場ゲートから真っ先にトラックへ駆け出してきた女子選手がいた。 観衆の視線はすべて、彼女に集まった。 新谷仁美選手。 無駄なものは何もかもそぎ落とされた、針金のように細い体。 誰よりも日焼けした褐色の肌。 その姿に、彼女が費やしてきたトレーニングの過酷さを想像する。 この一年、彼女は一体どれだけ自分を追い込んできたのだろう? 今年、彼女の好調ぶりは、大きなニュースだった。 1月にアメリカで行われたハーフマラソンでは日本記録を更新。 10月18日のプリセンス駅伝と、11月22日のクィーンズ駅伝では、いずれも区間記録を1分以上も更新する、ぶっちぎりの走りを見せた。 しかも、クィーンズ駅伝で走った3区の10kmの通過タイムは、なんとトラックでの女子10000mの日本記録(当時)を上回っていたのだ。 「新谷仁美、異次元の走り」 マスコミがそんな風にはやし立てたのは、誇張でもなんでもなかった。 誰から見ても、現在の彼女の強さは圧倒的で、驚異的で、超人
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