2020年9月8日に創業57周年を迎えたオリンピアサンワーズ。その歴史のあれこれを、シリーズでご紹介します。 (連載:第8回) ◆◇◆ 「誰にもおしえるな」 上田が重篤であるとの連絡を受けた川見だったが、入院先の病院がどこかは教えてもらえなかった。上田が、誰にも教えるなと言っているという。 川見は大きなショックを受けた。 胸をふさがれたような気持ちで、眠れぬ夜を過ごすことになった。 横になり目を閉じると、上田と過ごしたこの数か月が思い出された。 教員を辞め、パートタイムで働きながら上田の身の回りの世話をはじめた川見に対し、上田はとても厳しく接した。 時にはお客さんがいるその場で怒鳴られることもあった。 その厳しさと激しさは、周囲の人たちが「なぜ、そこまで叱る必要があるのか」と理解に苦しむほどだった。 しかし、一部の人と川見だけは「上田のおばさんは、何かを伝えようとしている」と感じていた。 「 もう、おばさんには会えないのだろうか? 」 いつ寝て、いつ起きたのか、そんな日々が1か月ほど過ぎた頃、ふたたび川見に連絡があった。 上田が川見を呼んでいるという。 ◆ 身も心もすべて 川見は、病室の扉を開けた瞬間、あっと驚くような光景を目にした。 重篤であるはずの上田が、ベッドの周りをゆらゆらと歩いているのだ。 上田は、まだ死ぬわけにはいかないという執念で、歩行練習をはじめていた。 川見の姿を見ると、上田は両手を広げて迎えた。 川見は呆然(ぼうぜん)と上田に吸い寄せられた。 上田は両手で川見の腕をつかむと、優しく引き寄せた。 川見は、はじめて、上田に触れた。 上田の声が、遠くから聞こえるように、耳元に響いた。 「 あんたのことが嫌いで厳しくしてたんやない。あれだけのことを言えたのは、あんたと私には『絆』があるからや 」 川見は、身も心もすべて、上田に包まれた気がした。 そして、その場に泣き崩れた。 上田は川見に、会わなかったこの1か月の近況を聞いた。 川見が日々の奮闘を報告すると、上田は、 「 そうか、がんばってきたんやな 」 とねぎらった。 川見が退室する時間になると、上田は川見に店のカギを渡して言った。 「 明日から、あんたが店開けとき 」 川見は、びっくりして言った。 「 え!?おばさん、私は店の開け方は知ってますけど、仕事のことは何もわかりません 」 あわてる川見に、上
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